この記事ではPLCソフト作成のルール作り・標準化について、ポイントや具体的に何を標準化していくとよいのか?そういった疑問に答える形で解説していきます。
目次
そもそも標準化って
早速ですが、私なりに噛み砕いて解釈した結論ですが
作業内容を失敗や経験から仕組化(ルール化)、またそれをアップデートしつつ、Q(品質)・C(コスト)・D(納期)に対して効率よく安全に成し遂げること。
です。
正直これを聞いて、簡単にできるようであれば苦労しませんし、私も記事に取り上げないと思います。
頭ではわかっていてもなかなか実践に移していくのは難しいと思います。
言っていることは分かるが、具体的に何から手を付ければよいのだろうか・・・
製造業であれば機械設計、電気設計、PLCであればソフト設計で切り分けて考える必要があります。
企業さんレベルでは既にルール化されているところもあるかと思います。またお客様の仕様に合わせる必要がある場合はこの限りではないと思います。
今回はPLCソフト設計において特にルールとして作り方も決まっていないのだけれども、これからルール化して行きたい。そのスタートラインである最初の1歩をアシストするためのお手伝いが出来れば幸い!という思いでお話ししていきたいと思います。
具体的にどこから何をアプローチしていけばよいかを、少し長いですが具体的な例も含めて5回に分けて解説していきたいと思います。
Q(品質)について
この品質の部分については、全てにおいてのゴールと言っても過言ではないと思います。
理由はこの先出てくるコスト・納期についてもクリアできれば最終的に安定した品質の商品を生み出すことが出来るからです。
まずは品質においてルール化しない場合とルール化した場合で考えていきたいと思います。
ルール化しない場合
品質面において、この2つの結果が生まれます。
①個人の技量により装置の出来が決まってしまう
②解決したはずのトラブルが、担当者が変わることで再発する可能性が高くなる
それぞれ会社の信頼に関わる内容ですよね。②においてはコミュニケーションをしっかりとってルール化すれば大幅に可能性を低くすることが出来るはずです。
では次にルール化した場合について考えていきます。
ルール化する場合
①誰が作成してもほぼ同じ出来栄えの商品を生み出すことが出来る
②再発防止策を盛り込んでルール化することで過去に経験したトラブルを未然に防ぐことが出来る
昔、ラーメン屋のチェーン店でアルバイトをしていた経験があるのですが、「この出汁を何グラム」、「ゆでる時間は〇分〇秒」と事細かくルール化されていました。
このルールに沿った手順を踏めば、多少の手際の良し悪しはあると思いますがアルバイトが作ってもベテランの正社員が作っても同じ味で同じものが出来上がってきます。
バイトだけで店を回していたりもしていましたので、開発した本人でなくても、誰でも作れてしまうわけです。
またそのルールは、何か途中で手順に不都合があった場合に改善を盛り込んでいくことで、同じ失敗を起こしにくくなります。
理想形は設計もそうありたいですが、結論全て取り入れるのは無理です。ソフト設計に取り入れることのできる手法については後ほど解説していきたいと思います。
C(コスト)について
コストの部分を考えていくことでムダが生まれにくくなり、価格が安定し、結果品質にもつながります。
それではコストにおいてルール化しない場合とルール化した場合で考えていきたいと思います。
ルール化しない場合
コスト面において、こういった結果が生まれます。
使う品や量が決まっていないため、個人の技量や裁量に依存してアウトプットする金額にばらつきが生まれる
例えばルールを決めずに個人に一任してしまうと、選定する機材も何でもありになってしまいます。結果ムダが生まれます。
考え方次第では「検図の時に修正があれば、それでいいじゃん!」と思うかもしれませんが、検図の基準があればそれをなぜルール化しないのか?という疑問が生まれます。これがまかり通ってしまうと、次に時間のムダが生まれます。
時と場合で判断がぶれないようにする意味でも、ルールを明確にするのは大事なことです。
ルール化する場合
使う品や量が決まっているため、個人の技量や裁量に依存しづらい
先ほどと逆になりますが、選定するルールがあれば部材が決まってきます。またその量も決まります。
また、時と場合で判断がぶれにくくなります。結果3つのメリットが生まれます
ムダが生まれにくい
装置価格が安定する
品質の安定につながる
最初にルール化する際に時間はかかりますが、確実に時間的な効率化が図れるようになります。
D(納期)について
納期の部分を考えていくことで価格が安定すると同時に安全にもつながり、結果的に品質の安定につながります。
それでは納期においてルール化しない場合とルール化した場合で考えていきたいと思います。
ルール化しない場合
納期面において、こういった結果が生まれます。
①個人の技量により工数が上下する
②技量の高い人が時間を設定して、技量が低い人が業務を行う場合は時間的制約から過労や労働災害につながる可能性が高くなる
順番に考えていきます。
①の場合、技量のある人と低い人に分かれます。技量のある人は低い人に比べて工数がかからず、結果安く装置を提供することが出来ます。一概には言えませんが、そのような事例を私は過去に経験しています。
②の場合、時間的なプレッシャーがのしかかります。場合によっては残業を認めてくれない可能性もあります。効率よく物事を進める良い修行にはなるかもしれませんが、慢性化した場合は結果的に”過労”や”労働災害”につながりかねません。
このような点から、次にルール化した場合を見ていきます。
ルール化する場合
手順が決まってるので、技量や経験年数によるばらつきを抑えられる
先ほどと逆になります。ただしこれではまだ”ばらつき”が生じるので、”ばらつき”について考えていきたいと思います。
結論としては、ルールを厳格化しても限界がるので、経験値により時間的な観点からアプローチをかけていきます。
私の考えとしては”個人のレベルに応じた係数を設定する”です。
具体的には、課長が決定した工数に対して課長の習熟度を1として、係長なら1.1とします。課長が決定した工数100時間なら、係長は110時間の作業時間を認めるという事です。
実際には100時間分の工数しか装置価格に計上しませんが、前持った設計時間のプランニングが可能となり、結果的にプレッシャーが減って安全な作業につながります。
私はこの提案をしたことがあります。結果的に受け入れてもらえました。少々言葉が悪くなりますが、いくら説明してもこれが通らない会社は現状を変えたくない・社員の事を考えない会社だと思います。
時間的な部分は作業者への寄り添いが必要です。「ここを無視する=社員の気持ちなど考えない。社員よりも利益を追求している。」と言えるかと思います。
どのように標準化していくか
ものづくりでは、大きく機械設計と電気設計に分かれます。
今回はその電気設計の中で、ハードとソフトの面にさらに分けて考えていきたいと思います。
まず、大前提としてまず過去の実績の洗い出しを行います。どのようなパターンがあったか、失敗談など何でも構いませんので、まずは書き出してください。
その中から、ルール化するべきものを抽出します。具体的には最終解がQ(品質)・C(コスト)・D(納期)に対する効果へつながるように持ってきます。
ハード設計の場合
客先指定のある場合は、それに従ってください。
客先指定以外でルール化する場合は、以下のファクターになるかと思います。
①配線の色を電圧別に統一
②許容電流に対する線種の選択基準
③機材を選定するための基準
④ブレーカーなどの容量選定計算式の統一など
ソフト設計の場合(PLCラダーの場合)
こちらもまず客先指定のある場合は、それに従ってください。
客先指定以外でルール化する場合は、以下のファクターになるかと思います。
①全体の流れのルール化
②アドレスのルール化
③コメントのルール化
④各工程の構造のルール化(変数化、ファンクションブロック化して運用)
これらを決める前にまずは関連するソフトを抜き出してコードレビューを実施し、次に失敗事例を書き出します。
あとは作成→使用→修正の順でアップデートするといった手順になります。
今回の標準化についての記事はここまでです。次にPLC設計におけるそれぞれルール化について具体的に解説していきます。
まとめ
今回の記事を要約するとこんな感じです。
ポイント要約
①標準化はQCDを効率化して出力するためのもの
②過去の実績と失敗を書き出す
③最終的に品質が安定しムダが減り、安全な環境づくりに貢献できる