この記事ではPLCユニットにはどのような種類があるのか、今回は三菱電機Qシリーズのユニバーサルモデルを例に解説します。
目次
CPUユニット
CPUシステム全体を制御するユニットです。ゆわば脳みその部分です。
Qシリーズの場合、6種類のCPUがあります
- シーケンサCPU:リレー回路の代わりにラダー等で制御します
- モーションCPU:サーボモータを高度な動作をさせる際に使用する。
- C言語CPU:C言語やC++を使って制御するユニットです。
- WinCPU:Windows OSが搭載されているユニットです。
- プロセスCPU:ループ制御(フィードバックループなど)とシーケンス制御の両方がコレ1台で出来てしまうCPUです。
- 二重化CPU:停止することが許されないシステムで使うユニットです。メインシステムがダウンした際に別の待機システムに切り替えて使用するためのユニットです。
私の場合、今までは主にシーケンサCPUとモーションCPUを使用してきました。それ以外は特殊な用途で使うことが多いので、先輩や上司が使用しているのを手伝った程度しか触れたことがありません。
C言語CPUやWinCPUはラダーで表現するのが難しい複雑な動作や演算が必要な場合に使用しますが、C言語のスキルやプログラミングのスキルがないとなかなか使用できないCPUです。この辺りは三菱電機でもほぼ特注扱いになるようです。
CPUの使用頻度や種類にもよりますが、"CPU"と言えば「シーケンサCPU」の事を指し、それ以外のCPUは「○○CPU」もしくは「○○コントローラ」と名前を付けて呼ぶことが多いです。
電源ユニット
CPUユニットなどの他のユニットに電源を供給するためのユニットです。
入力はAC100~240VかDC24Vの基本的にはどちらかです。(一部AC100V~120V/AC200V~240Vというものもあります)
出力はDC5V(一部DC24Vというもあります)を各ユニットへ供給します。
主にこの2つの条件で型式が決まります
・入力がACかDCか?
・同じベースに載っているユニットの消費電流はどれくらい必要か?
ユニットの消費電流は三菱電機のホームページから確認できます。ホームページ内の上タブ「製品情報」→「シーケンサMELSEC」から調べたいユニットのページを選択し、「仕様」の部分をクリックするとこのように消費電流値を確認することが出来ます。
あとはこの電流値を足し合わせて合計の消費電流を出しましたら、選定する電源ユニットが決まります。
調べていたら意外と時間がかかるので、三菱電機の機種選定ツールを使用して選定する方法もあります。
ここにユニットなどを並べると、消費電流など自動で計算してくれます。直観的で使いやすいので一度使ってみてはいかがでしょうか。
私が選定するときは"Q61P"あたりが多いです。
ベースユニット
それぞれのユニットを装着して、CPUと各ユニット間の交信や電源ユニットから各ユニットへ電源を供給する役割を担っています。
ベースユニットの型式にはQ35BやQ38Bなどがあり、増設ベースなどの例外もありますが、基本的によく使うQ35BやQ38B、Q312Bなどの場合はそれぞれCPU1台と電源1台を除くユニット数で型式が異なります。例えばQ38BならCPU1台と電源1台を除くユニット数8台装着可能といった感じです。(写真はQ38Bを使用しています。)
12台を超えるようでしたら増設ベースというものがあり、ベース間を接続するケーブルで連結すればユニットを足していくことが出来ます。CPUの構成によって上限の接続数は変わります。
私の場合、CPUがシーケンサCPUのみの時はQ35B、Q38B、Q312Bあたりをよく使用しています。モーションCPUが必要になってきましたらQ38DBやQ312DBを使用しています。
入力ユニット
スイッチやセンサなどのON/OFF情報をインプット(入力)するためのユニットです。入力ユニットにも種類が存在し、入力方式と入力点数で決まります。
入力方式には以下の方法があります。
- AC入力
- DC入力(プラスコモン)
- DC入力(マイナスコモン)
まずPLCはここから始まるといっても過言ではないくらい、最初に理解する必要のあるユニットです。ここは重要なので「こんな種類のユニットがあります」といった話だけでなく、プラスコモン・マイナスコモンと言うのがどのような方式であるか?よく使用するものについて別の記事で解説します。
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出力ユニット
ランプなどのON/OFFを制御するためにその情報をアウトプット(f出力)するためのユニットです。出力ユニットにも種類が存在し、出力方式と出力点数で決まります。
出力方式には以下の方法があります。
- リレー出力
- トライアック出力
- トランジスタ出力(シンク)
- トランジスタ出力(ソース)
- TTL-CMOS出力
入力ユニットに同じく、こちらも初めに理解する必要のあるユニットです。ここは重要なので「こんな種類のユニットがあります」といった話だけでなく、シンク出力・ソース出力などよく使用するユニットについてどのような方式であるかを別の記事で解説します。
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位置決めユニット/シンプルモーションユニット
パルス出力でステッピングモータやサーボモータを駆動させたり、光リンクなどを用いてサーボアンプと通信してサーボモータを駆動させたりするユニットの事です。
シーケンサCPUを総理大臣に例えるなら、モータへ駆動指令するための省の大臣みたいな役割を担っている部分です。
位置決めユニットとシンプルモーションユニットの違い
・位置決めユニット:パルス発振でステッピングモータやサーボモータを駆動させるユニット
・シンプルモーション:SSCNETⅢ/H や CC-LINK IEなどのリンクを使って、データ通信によってサーボモータを駆動させるユニット
大きくはこんな感じで分類されます。
主にこの3つの条件で型式が決まります
・位置決めユニットかシンプルモーションユニットか。
・位置決めユニットの場合はパルス発振方式はオープンコレクタかラインドライブ(差動出力)か。
・モータを何軸駆動させるか。
※1:オープンコレクタとラインドライブについての説明は別の記事で紹介します。また、一部アナログ出力によるサーボモータを駆動させるユニットも存在します。
かなりざっくりですが、位置決めユニットの型式はQD70やQD75と表されているものです。一方シンプルモーションユニットはQD77と表されているものになります。QD75でもSSCNETを使ったものがありましたが、2019年までにリンク系はQD77に統一されました。(2020年3月現在)
アナログユニット
アナログ値をディジタル値へ変換したり、ディジタル値をアナログ値へ変換させるためのユニットです。例えば「Q64AD」というユニットの場合、アナログ値をディジタル値へ変換して、PLC内のソフトで数値計算できるようにしてくれるユニットです。電圧や電流というものをディジタル値という数字に変換して取り込めば、その数字と電圧・電流値の関係が分かります。
「電圧が変化する」→「ディジタル値が変化する」→「実際の対象物の動きが数字で分かる」→「細かい管理が出来たり、計算すれば色々なことに応用して使える」といった感じで使用します。初めて聞くと少し戸惑うかもしれませんが、Q64ADユニットを例に少しだけ簡単に説明します。
アナログ入力には電圧入力と電流入力があります。
使用するセンサ等によってアナログ入力値が異なります。
■電圧の場合
・DC 0~5V
・DC 1~5V
・DC -10~10V
・DC 0~10V
■電流の場合
・4~20mA
・0~20mA
取り込んだ入力値をディジタル値へ変換します。例えばDC 0~5Vを0~4000という数字に変換してPLC内に取り込むといった感じになります。もっと細かく見たい場合はDC 0~5Vをアプリケーション上で0~12000にすることもできます。
アナログ値をディジタル値へ変換する例を紹介します。アナログ値で出力されている接触式の高さ検出センサ(変位計)があるとします。
基準位置の高さを測定した際のディジタル値と測定対象の高さを測定した際のディジタル値を比較します。対象物が10mmと分かっていれば、ディジタル値1000の変化で10mmと分かりますね。
仮に比例する特性を持っている場合、次の対象物を計測すると"1700"というディジタル値が変換されて返ってきました。するとその対象物の高さは15mmであることが分かります。
このような感じで変換して使用します。
高速カウンタ/パルス入力ユニット
写真がありませんでしたので、解説のみさせて頂きます。入力ユニットと同じような形をしています。
このユニットは高速で入力されるパルス信号をカウントするためのユニットで、エンコーダからのパルス信号をカウントする目的で使用することが多いです。エンコーダ以外のセンサ入力に対応したものもあります。そのような高速でON/OFFするものをカウントするとなると、通常のQX41などの入力ユニットだと取り込んで処理する時間がかかりON/OFFを取りこぼしてしまいます。
その部分をカバーするために高速での入力カウントに特化したユニットです。
CC-Linkユニット
三菱電機によって開発されたネットワークで、他の制御機器とわずか1本リンクさせるように配線することで入力や出力、データなどを交信することが出来ます。図を使って簡単に解説します。
CC-Linkを使うと配線がコンパクトになります
制御盤から離れた装置にセンサやランプの信号を1本ずつ接続するとこのようになります。
配線がごちゃごちゃになっているのが分かりますね。仮に制御盤と装置が50m離れていて、どれか1本断線した場合見つけるのが大変です。
ここでCC-Linkを使うとこのような形で、コンパクトになります。
CC-Linkユニットから出ている線は、このオレンジ色の線のみです。このように次から次へ順番につないでいきます。これで入力や出力、データなどを交信することが出来ます。
電力計測ユニット
すみません。こちらも写真がありませんでしたので、解説のみさせて頂きます。
実際に電流の流れている動力線から並列に入力することで、消費電流や周波数、力率などを計測してPLC内部へ取り込むことが出来るユニットです。この情報を使用してPLCで演算して使用したり、上下限を監視してエラーを発報したり、タッチパネルなどでグラフを表示させたりすることが出来ます。
このユニットは私も使用したことがありますが、お客様の仕様で設置することが多いです。
ネットワークユニット
他の制御機器とEthernetでLANケーブルを使って、データなどを交信することが出来ます。
PLC同士で接続してそれぞれのPLCの数値情報などを共有することが出来ます。
機種により多少の制約はありますが、PLC同士で通信する方式として、主にEthernet(読み方:イーサネット)、MELSECNET/H(読み方:メルセックネット・エイチ)があります。主に生産ラインの装置間でのデータ通信が必要な場合で三菱のPLCだけならMELSECNET/H、他メーカーのPLCが混在する場合はEthernetが多いです。
またPCとの通信も可能で、管理PCやサーバーなどとも通信することが出来ます。
最近ではCPUユニットにポートがあるので、使用する頻度が少なくなりましたが、CPUユニットのポートよりもより細かい通信設定が可能となっています。高度な通信をする際に使用することがあります。
シリアルコミュニケーションユニット
他の制御機器とRS-232Cのシリアル通信でデータなどを交信することが出来ます。
RS-232Cで使用できる機器に限りますが、接続できる制御機器の例としてはバーコードリーダーなどがあります。
私の方ではRS-232Cで交信する制御機器が今でも多くあるため、使用する頻度としては比較的高いです。
まとめ
三菱電機Qシリーズ ユニバーサルモデルにおけるユニットの紹介をしましたが、本当に色々な用途で使用できるユニットがあります。
最後にもう一度どのような種類があったのかを書いていきます。
PLCユニットの種類
①CPUユニット
②電源ユニット
③ベースユニット
④入力ユニット
⑤出力ユニット
⑥位置決めユニット/シンプルモーションユニット
⑧アナログユニット
⑨高速カウンタ/パルス入力ユニット
⑩CC-Linkユニット
⑪電力計測ユニット
⑫ネットワークユニット
⑬シリアルコミュニケーションユニット
紹介したユニット以外にもまだまだ種類はありますが、Qシリーズで使用する頻度の高そうなユニットを挙げてみました。